2018年2月6日
『Kinema Rock ‘n’ Roll』Crank up Talk Session!
presented by The Doggy Paddle
2018年、戌年。
The Doggy Paddleからあなたに届け!
結成10周年にして完成した待望のファーストフルアルバム『Kinema Rock ‘n’ Roll』。
それは音楽であり、アートであり、物語でもある。サウンドや歌詞、デザインに至るまで、バンドの誇りと美学が詰まった、まさに芸術作品と呼ぶべき1枚となった。
いよいよ本格的に動き出したドギー・イヤー。その口火を切る新アルバムの全貌やいかに!
メンバーそれぞれの推し曲、そしてタイトルに込めた想いとは。心ゆくまで語ってもらった。これを読めば『Kinema Rock ‘n’ Roll』が101倍楽しめること間違いなし!
それではバンド初となるメンバー全員インタビュー、間もなく開演致します。
今まで以上に恵守の核に触れたアルバムになっている(横道)
――ついに『Kinema Rock ‘n’ Roll』発売です。オリジナルメンバーの恵守さん、横道さんにとっては10年目にして初のフルアルバム。バンド史上最もドラマチックな作品が出来あがりましたね。
横道 孟(Gt): 今まで以上に恵守の核に触れたアルバムになっていると思います。レパートリーは広いんですけど、ちゃんと一貫性があって。それは恵守のパーソナリティーがものすごく出ているからなんですよね。歌詞においても今までで一番恵守が出てる。ここまで暗いところを出せるようになったのは、俺は慎ちゃんの力だと思ってるんですよね。
村田 慎太郎(Ba): 俺っていうかこの4人になったからですよ。
横道: そうそう、このメンバーになって自分をさらけ出せるようになった、っていうか。
――一昨年の慎太郎さん加入で現メンバーになったわけですが、それでバンドは変わりましたか?
恵守 佑太(Vo / Gt): 確かにそれはありますね。俺は気を遣わなくなったというか……良い意味でも悪い意味でも、バンドやる上で横柄になれたんですよね。ちょっと前までは“俺がやらなきゃ!”と思っていたんですけど、今はすごくメンバーが支えてくれているという実感があるので、ふんぞり返っていられるんですよね。
“弾き語りのバンド版”じゃなくてちゃんとドギーパドルの曲になったのがすごく嬉しかった(恵守)
――今作は全曲、恵守さんによる作詞作曲とあって、歌詞やタイトルの至る所に恵守さんを取り巻くカルチャーを感じます。例えば「エレクトリック・シープドッグ」。これは映画「ブレードランナー」の原作でもあるフィリップ・K ・ディックの小説・『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』がモチーフなっていますよね。
恵守 : そうなんですよ!そのエッセンスを感じてもらえたのはすごく嬉しいですね。その世界観を借りて、自分の中で妄想しました(笑)。好きな人はすぐに分かると思います。
サウンド的にもちょっと珍しい感じに仕上がったんじゃないかな、と。特にドラムの音とか。
――ちょっと電子音っぽくて新鮮でした。
中村 虎太朗(Dr): これは遊びましたねえ(笑)。ドラムは録り終わったあとに、そのモチーフをエンジニアさんと共有してエフェクトをつけたんです。
横道 : この曲はレコーディング終わったあとが楽しかったよね。だからミックスも含めてやっと完成した、という感覚でした。
――「エレクトリック・シープドッグ」もそうですが、今作はミドルナンバーの存在感が鍵だと思いました。「black bunny sweet girl」や「Bandit!」のようなロックチューンも然ることながら、ドギーらしさを感じたのはミドルナンバーやバラードだったんです。曲ごとの物語に合わせてバラエティ豊かな音楽が鳴っていたのがとても魅力的でした。
村田 : 今回は特にそういう要素が強いと思います。
恵守 : そうですね。例えば「クドリャフカ」(2014年)は自分たちにとって名刺代わりみたいな曲なんですけど、もっと深く仲良くなるとこっちの方になってくるんですよね(笑)。
▽「クドリャフカ」MV
――なるほど(笑)。でも「嵐が丘」が音源化される前からお客さんの間で話題になったりと、今やミドルナンバーもドギーの代名詞だと思います。それはガレージ一辺倒ではなくメロディーやポップな要素を大事にしてきたバンドならではの武器だな、と再認識しました。
恵守 : そうですね。あと一昨年くらいから弾き語りライヴを始めて、今回でいえば「あなたに届け」「Bandit!」「アイボリー」「ガーベラ」「ユーフォルビア」「グッドメロディ」が弾き語りで作った曲なんです。自分が色濃く出ているという点も含め、この影響がでかいのかなと思います。
――確実にその影響だと思います。
恵守 : 今まではエレキギターを持ってスタジオに入って、コードとメロディーが浮かんだらメンバーに聴かせて。歌詞もバンドでの音を聴きながら並行して書くこと方が多かったのが、今回はひとりで成立させるところから始めたという違いはありました。でもそれをバンドで演奏した時に“弾き語りのバンド版”じゃなくてちゃんとドギーパドルの曲になったのがすごく嬉しかったんですよね。
恵守佑太という男のメロディーと声の凄味を感じた(中村)
――ではアルバムの成り立ちも分かってきたところで、曲についても伺います。せっかくなので、メンバーひとりひとりに一番思い入れのある曲を発表していただき、その曲について皆さんに語っていただければと思います。
中村 : 僕は「ガーベラ」ですね。「ガーベラ」をこの曲調にしようと提案したのは僕なんです。
村田 : 言ってしまえば今までのドギーパドルらしくない曲なんですよね。恵守のメロディーは一貫しているけど、装いが違うというか。
中村 : まさにそうなんです。だからこそ余計に恵守佑太という男のメロディーと声の凄味を感じましたね。僕はもともとこういう曲調がすごく好きで、弾き語りの音をもらって色々とイメージしていたら、ドギーパドルにこういう曲調がハマることを発見したんです。それで“こういうアレンジで行こうよ!”ってメンバーに提案したら“いいじゃん!”って言ってくれて。なかなか慣れないことをやったので難しい部分はありましたけど、嬉しかったです。
――確かにこういったジャズライクなバラードは、今までのドギーパドルにはない曲調ですよね。
中村 : あと僕、この曲のギターソロが好きなんですよね。歌えるギターソロが好きなんですけど、このアルバムで一番好きなギターソロが「ガーベラ」のソロなんですよね。
横道 : これアドリブなんですけどね(笑)。エンジニアさんと話をする中でアレンジが変わって、もともと用意してたものがハマらなくなっちゃって。それで現場でアドリブで弾いたのを、エンジニアさんもすごく気に入ってくれたんですよ。
この曲を聴いて俺のギターが好きだったら俺のことを好きになれる(横道)
――横道さんにとっては今回、久々にプレイヤーに徹してのアルバムとなりました。
横道 : 確かに今回のアルバムがギタリストとしての俺が一番出てるかもしれない。
――そういった点も踏まえて、どの曲を選びますか?
横道 :「Bandit!」か「ユーフォルビア」なんだけど……「ユーフォルビア」かな。恵守の弾き語りで聴いたときに、すごく泥臭さを感じたんだけど、さらに泥を盛れるな、と思って。最初は歌から始まるアレンジだったんですけど、俺がイントロを作ったんですよね。
――ガサついた音で鳴らされるイントロのフレーズ、とても印象的でした。
横道 : この曲のギターフレーズが今作の中で一番自分を出したギターなんですよ。だからこの曲を聴いて俺のギターが好きだったら俺自身のことを好きになれるっていうか……(笑)。
(一同笑)
横道 : だから逆にこのギターが嫌いだったら、普通に話してても俺のこと嫌いになると思う(笑)。そのくらい自分の人間性が込められたギターなんですよ。
村田 : “横道 孟”を知りたければユーフォルビアを聴け!と(笑)。
恵守 : それ良いキャッチフレーズ!
横道 : あと歌詞もすごく好きなんですよね。恵守って基本的に嘆いてるんですよ。この曲もサビは結構明るいフレーズじゃないですか。でも〈悲しみが多すぎてさ 溢れ出して靴がびしゃびしゃ〉って歌詞なんですよね。〈汚いベッドで死んだ振り〉(2016年「嵐が丘」)以来の俺の中ヒットです。
▽「嵐が丘」MV
--タイトルの「ユーフォルビア」とは奇妙な形をした植物の名前だそうですね。
恵守 : 曲を作っているときにずっと浮かんでいた風景にユーフォルビアがあったんです。「バニーカクタス」を作った時もそうなんですけど、バニーカクタスのどんどん分裂していく様子から、何かが膨らんで増えていくイメージで作ったんですよね。「ユーフォルビア」はその続編ってわけじゃないですけど、ちょっとグロテスクなビジュアルイメージに曲の世界観を感じてもらえたらと。
横道 : この曲は恵守流ディストピアなんだと思います。
恵守 : これはずっと一貫してるんですけど、自分の精神世界にあるんですよね、そのディストピアみたいなものが。だから言ってしまえば「クドリャフカ」とかも同じ世界の話だと思うし。
――恵守さんの中にあるディストピアこそが、ドギーパドルの楽曲の源泉なんですね。
横道 : 恵守の歌詞を読んでると日ごろどんだけ傷ついてるんだよ、って思いますけどね(笑)
(一同笑)
恵守 : いいんだよ、それを昇華して曲にしてる部分はあるからさ。
メロディーに絶対的な自信があるからこそ、曲をいくらいじってもドギーパドルというものがブレない(村田)
――続きまして、慎太郎さんはいかがでしょうか。
村田 :「ノイローゼ」ですね。タイトル聞いたときにまずびっくりしましたけど(笑)。パンチがすごくないですか?ノイローゼって。もし俺が曲の内容知らなくて曲順を見たときにこのタイトルがあったらすごく気になると思うんですよね。
――確かに、ちょっと怖い物見たさというか……。
村田 : そうなんですよ。この曲、俺の中ではオルタナな感じがしていて、ドギーの初期の楽曲の暗くて重たい雰囲気があると思っています。でもサビに恵守の良さが出ていてすごくキャッチーなんですよ。家で洗い物をしていてつい歌ってしまうのはこのサビですね。歌詞もすごく好きなんです。
恵守 : 大丈夫か?それはそれで(笑)
(一同笑)
――この曲然り、ドギーパドルの楽曲には必ず一度聴いただけで覚えられるフレーズがあるんですよね。だからライヴで新曲を聴いても、帰りにすぐ鼻唄で歌えちゃう。
横道 : そこは俺ら結構こだわりが強くて。メロディー至上主義なんですよね。
村田 : そこに絶対的な自信があるからこそ、曲をいくらいじってもドギーパドルというものがブレないんだと思います。
中村 : あとこの曲、慎ちゃんがベースラインを持ってきて、そこからふわっと広がっていったんですよ。これ言わないと(笑)。
村田 : あ、そうだったね!(笑)。
恵守 : 実はこの曲、録る段階で悩んでしまって。アルバムに入らない可能性があったんですよね。
横道 : そうしたらスタジオに慎ちゃんが持ってきたフレーズがパワーフレーズで。これはもう入れなきゃダメでしょ!って。だから慎ちゃんのベースラインがなかったら、この曲はアルバムに入ってなかったと思います。
収録曲の半数を弾き語りで作ったアルバムの魅力が集約されているのが「グッドメロディ」(恵守)
――では最後、恵守さんです。全曲の作詞作曲、そして弾き語りを取り入れた曲作り。横道さんも言っていたように、ご自身のパーソナリティが色濃く出た作品になったと思います。
恵守 : そうですね。自分的には全部わが子なので、同じ気持ちではあるんですけど、何か1曲と言われたら「グッドメロディ」ですかね。もうタイトルそのまま、グッドメロディができたな、と。
――この曲は歌い出しの掴みも強烈で、そこからバンドサウンドになる瞬間の瞬発力にも圧倒されます。この曲も弾き語りから生まれたと聞いて驚きました。
村田 : Aメロのドラムのビートが入った瞬間“こういう感じもあるんだ!”って言ってたよね?
恵守 : そうだね。
横道 : それに弾き語りの時はもっとテンポも遅かったもんね。
――まさに先ほど恵守さんが言っていたように、バンドに持ち込むことで化学反応が起きた曲なんですね。
恵守 : そうですね。バンドになった途端、こんなにも広げてくれるんだ、と思いました。だから当初自分の頭にあったイメージは完全に崩れ去っていて、もう思い出せないくらいなんです。そういう意味でバンドの力をすごく感じたし、弾き語りで作ったスタンスもちゃんと残せてる。だからすごく新鮮だし、収録曲の半数を弾き語りで作ったアルバムの魅力が集約されているのが「グッドメロディ」なんですよね。だから自分の中では思い入れが強いんです。
――皆さんが言うように、今作は確かに恵守さんという人物を軸にしたアルバムなんだと思います。それなのにメンバーそれぞれの個性も今までで一番出ている作品だと感じました。ソングライターへの敬意と、プレイヤーとしての矜持、そして何よりひとりひとりがThe Doggy Paddleというバンドを本当に愛しているんだな、と。
村田 : 単独インタビューでも言いましたが、俺はもともとドギーのファンだったから恵守の書く曲はもっとたくさんの人に知られなきゃおかしい、っていう思いは強いですね。自分がそこまで影響を受けたということは、他にもきっといるはずなんです。それだけは絶対に自信があって。だからそういう人のところまで届けなきゃいけないんですよ。そのために俺たちがやらなきゃいけないことはたくさんあるけど、この音楽が埋もれてしまうのだけは、絶対にダメなんですよ。
中村 : そう思いますね。俺も入る前からドギーパドルが大好きだったから、前任のドラムが脱退したときに“俺が叩いたらこのバンドもっとカッコよくなる!”って横道君に長文のメールを送って……(笑)。だからバンドにプラスになることなら何でもやるし、もしその逆のことが起こりそうになったら“それは違うんじゃない?”って言いますし。
自分たちがWESTでライヴをして、仲間のバンドに大きなステージに立つ姿を見せたい(恵守)
――最後に『Kinema Rock ‘n’ Roll』というタイトルについて、聞かせてください。
恵守 : 今回は、アルバムで一貫したテーマがあるというよりは、曲ごとに別々の物語が描かれていて。それが映画みたいだな、というのがひとつ。もうひとつは「キネマ・ロックンロール」という曲ですね。この曲はバンドマンの曲なんですけど、同時にアルバムを総括する曲でもあって。そこから名付けました。
――「キネマ・ロックンロール」の歌詞に登場する〈劇場〉に、アルバムツアーのファイナルの地、TSUTAYA O-WESTのステージを重ねてしまいます。
恵守 : 俺と横道でドギーパドルを始めて10年。解散するって話も何度もあったけど、今この4人になって『Kinema Rock ‘n’ Roll』をリリースできたのは本当に幸せなことだと思います。俺たちは事務所にも入っていないDIYバンドだけど、協力者には恵まれていて。そういう方たちの助けもあって、5月にTSUTAYA O-WESTでワンマンが出来るんです。だからこそ、風穴を開けたい。俺たちと同じようにライヴハウスで活動しているバンドにも、かっこいいバンドはたくさんいるから。まず自分達がWESTでライヴをして、仲間のバンドに大きなステージに立つ姿を見せたいんです。それでどんどん後に続いてほしいんですよね。
▽The Doggy Paddle ONE MAN 2018 -予告編-
text by mai ishihara
2017年12月7日
【Road to The Doggy Paddle!!】
Shintaro Murata One Man Interview presented by The Doggy Paddle
遡ること10月某日、The Doggy Paddleのアジトにて画策された、
バンド史上最も破天荒な企み、その名も“101CHALLENGE!”。
この記事を読んでいる諸君は、もう概要をご存知とは思うが、念の為にもう一度説明しておこう。
“101CHALLENGE!”とはThe Doggy Paddleが来年5月16日に決行する、
渋谷・TSUTAYA O-WESTのワンマンライヴのチケットの売れ行きに応じて様々なコンテンツを公開するという大企画だ。
1st Stage達成時には来年2月発売のアルバム『Kinema Rock’n’Roll』から早くも「black bunny sweet girl」のライヴ動画を公開。
続く2nd Stage達成のリターンがこの記事なのである。
なんと今回はオリジナルメンバーを差し置いて、
昨年バンドに正式加入したばかりのベーシスト村田 慎太郎に単独インタビュー!
え、なんでいきなり慎ちゃんなのかって?そうそう、それを説明しないと。
我らが慎ちゃんは今年、記念すべきMISOJIを迎えたってコトで、
こりゃあ“101CHALLENGE!”でお祝するっきゃない!と30枚達成でのソロインタビューが決定したってワケさ。
それじゃあ、準備はいいかい?
ドギー加入秘話からO-WESTへの意気込みまで……村田 慎太郎 ワンマンインタビュー、
題して“Road to The Doggy Paddle!!”スタート!
恵守は俺にとっての憧れの人
――まずはドギーパドルとの馴れ初めから教えてください。
「俺はもともと恵守(Vo / Gt)のファンだったんですよね。前のバンドのメンバーの家で
〈歯車〉が入ってるドギーのセカンドデモを聴いて、格好良い歌を歌う人だなと思って。
だから俺にとっては憧れの人なんですよね、恵守って」
――他のメンバーとはいつごろから交流があったのでしょうか。
「他のメンバーに関しては2年前の12月まで、全然交流がなくて(笑)」
――逆に2年前の12月に、何があったんですか。
「旅行に行ったんですよ、マカオに。恵守と横道(Gt)とコタロー(Dr)と4人で」
――それまで交流がなかったのに突然旅行って……。急接近すぎませんか(笑)。
「当初は恵守とふたりで行くつもりだったんですけどね、なぜか4人で行って(笑)。
それでなんか意気投合しちゃったんですよね。
だからその旅行がなかったら加入はなかったかもしれません」
オファーされた時、ベースも持ってなかったし、弾いたこともなかった
――年が明けて2016年の2月に前任のベーシストが脱退。同年3月からサポ―トベーシストとしてドギーパドルに参加することになった、と。
「そうなんですよ。旅行の時は自分がドギーでベースを弾くなんて、1ミリも思ってませんでしたけど。
……でもこうして思い返してみると、色々おかしいんですよね」
――おかしい、とは。
「最初にドギーからオファーされた時、俺はベースも持ってなかったし弾いたこともなかったんですよね。
前のバンドではヴォーカルギターだったので。だからもちろんメンバーも俺がベースを
弾いているライヴを観たとかでもなく……。しかも当時サポートベースは3人体制でやりますって発表していて、
当然ですけど他の2人はベーシストなわけですよ。だから、なんだこれは、って(笑)」
――もはや無茶ぶりの範疇すらも軽く超えていますね。
「まあテクニックじゃなくて人間性を見てくれたってことですかね(笑)。
でも不思議と俺も“いやいや無理でしょ!”とは思わなかったんですよ。
ドギーを好きな気持ちだけは他の2人に負けてないぞっていう自信はあったから、
それだけで頑張っていたんでしょうね。好きなバンドだけに、プレッシャーはありましたけど」
――それはそうですよね。
「ドギーは活動も活発で、ましてや自分もファンだったわけだから、
自分が入ることで悪い意味で変わってしまったら……と。でもやると決めてからはナニクソ、でしたけどね。
3人とサポート、という気持ちで弾いたことは一度もなかったです」
こんなに合うやつは俺しかいないだろう、って自信はあった
(『ThunderBolt Parade』Trailer)
――その後10月10日の『ThunderBolt Parade』のレコ発ライヴで、晴れて正式加入となりました。
「4月以降はずっと俺が弾いてたので、もう当たり前みたいな感じになっていたんですよね。
正式加入前に遠征にも行ってたし、レコーディングもしていたので(笑)」
――それならもっと早く正式メンバーにしてほしい、という気持ちはなかったんですか?
「なかったですね。……別に婚姻届にサインしなくても……みたいな(笑)」
――あはははは!(笑)でも晴れて10月に婚姻届に……
「サインしましたね(笑)こんなに合うやつは俺しかいないだろう、って自信はあったし。
まあ、それを思わなかったら入るべきじゃないと思うんですよね」
――ちなみに、プロポーズの言葉は?
「それ、覚えてないんですよ。場所は焼肉屋でしたね。なんか改まってる感はありましたけど。
もう同棲期間(笑)が長いから、お互いのことも分かっていたし。俺の答えは決まっていたので。
まあ、真面目な話をするとタイミングについてはちゃんと自分たちの企画の日にしたい、
とか色々と気を遣ってくれてたみたいで。そういうところ律儀なんですよね」
――そんな加入劇から今年の10月で1年。ファンだったバンドのメンバーになった感想は?
「現実を観た感じはありましたね、美化してた部分はあったから。悪い意味じゃないんですけど。
やっぱり友達として会ってる顔とは違う。真剣にやってるからこそ、なんですけど。
例えば今まで恵守の怒ったところなんて見たことなかったけど、そういう一面も見たりとか。
長い時間一緒にいると、良いところも悪いところも当たり前に見えてきますからね。
向こうからしてもそうかもしれないけど(笑)」
――1年経って、慎太郎さん自身はバンドとの関わり方で変わった部分はありますか?
「入ったばかりの時は新しく……ましてやベース未経験で入ったので、意見しづらい自分がいたんですよね。
ベーシストとしても、口には出さないけど最初のうちは“弾いたことないし”って逃げはあったんですよね。
でも観る人にはそんなことは関係ないし、そこに甘えてもしょうがないから。
バンドのことに関しても後から入って分からないことも多いから、最初は黙ってることが多かった。
でも1年経ってそれは良くないな、と。お互い信頼してるなら思ったことを言った方が良い、と思うようになりました」
メンバー3人の人生は、自分の人生。だから頑張らなきゃいけない。
――改めて慎太郎さんはドギーパドルって、どんなバンドだと思います?
「俺もドギーが大好きだけど、ドギーパドルは全員ドギーパドルが大好きなんですよ。
バンドにかける熱量がみんな同じ。そしてみんな不器用。嘘がつけないんですよね。
自分はそうじゃないって思ってたんですけど、そんなこともないらしくて(笑)。
向こうも俺を人間として好きになってくれたから今があると思うんですけど、
入って分かったのは、俺も3人の人間性が好きなんですよね。その上、バンドがカッコイイっていう。
一緒にいて楽しいし、愛に溢れてますよ、ドギーパドルは。
でも仲良しごっこになっちゃうとそれは違うから。その分すごくストイックなんですよね」
――仲良しごっこができるほど器用だとも思えませんが(笑)。
「あはははは!そうかも(笑)。バンドってメンバーが4人いたら4人でひとつなんですよ。
メンバー3人の人生は、自分の人生。だから頑張らなきゃいけないなって思います。
人の人生背負うわけですからね」
――今の4人になって、メンバー同士の信頼関係はより強固になったように思います。
「信頼関係はもう絶対的なものだと思います。絶対に壊れないと、俺は勝手に思ってる。
何かあっても必ず元に戻ると思うし、元に戻さなきゃいけない。
バンドは4人いるんだから、たとえば恵守と横道が喧嘩しても、あとの2人がなんとかすれば良い話。
だから逆の立場でもそれをやってほしいと思ってるし。向いてる方向は同じだから、心配事はないですね。
……きれいごとですかね(笑)」
俺はコタローと良い水槽を作って、その中で恵守と横道に好き勝手に泳いでほしい
(「あなたに届け」MV)
――ドギーパドルは自主レーベルを立ち上げ、アートワーク等も自ら手掛けるDIYバンド。もしドギーパドルがひとつの会社だとしたら、それぞれどういう役割だと思いますか?
「やっぱり恵守には社長であってほしい。恵守の書く詞とか歌ってる姿をみんな尊敬してるし、好きなんですよね。
自分のやってるバンドなんですけど、ひとりで夜中とかにお酒呑みながら聴くんですよね。
その度に“これは絶対色んな人に届けたい”って思うのは、恵守の歌があるからで。そこはずっと変わらなくて。
最初は憧れだったけど、色んなことを知って……真面目なところもあるし、弱いところもいっぱいあって。
ドギーをやってから余計好きになりましたね。
だからそのバンドで弾けることは嬉しいな、って思っています」
――リズム隊の相方、コタローさんはどうでしょう。
「コタローは現場監督ですかね。会社のたとえになってないですけど(笑)。
実は一番頭が切れる。みんな一貫して真面目なんですけど、コタローはすごく冷静。
物事を客観視出来るんですよね。恵守とコタローって似てるけど似てないみたいな感じで。
恵守は情熱的で感情が豊かなんですけど、コタローはそれを受け入れた上で冷静になれる。
だから2人の関係は成り立ってるんだろうなって。あと、俺とコタローは水槽を作る側なんです」
――水槽を作るとは?
「ドギーパドルはすごい水槽なんだ、ってコタローと呑みながら話したことがあって。
水槽だから当然中に魚が泳いでるんですけど、その魚が恵守と横道。
俺はコタローと良い水槽を作って、その中で恵守と横道に好き勝手に泳いでほしいんです。
水槽っていくら綺麗にしても、そこに魚がいなきゃ誰の目にも止まらないし、魚は水槽がないと泳げない。
そのバランスが俺の中ではあるんですよね」
――そうですね。水槽を整えてくれる人がいなければ、恵守さん横道さんは自分たちの良さを出す場がない。
「そう。それに水槽を作ってる側からしたら、そこで気持ち良く泳いでくれるのを見たら嬉しいから。
ドギーパドルって3人ともすごく優しくて。
恵守とか横道は水槽を作ってくれたことにちゃんと感謝が出来るんですよね。
この水槽があるのは作ってくれた人がいるからだ、っていうのを分かってる。
だからすごく対等なんですよね。それはすごく思います」
後から入って来たからこそ、潤滑油になりたい
――もうひとりの“泳ぐ側”横道さんは、会社にたとえたらどうなりますか?
「横道は……会社にはいないんですよ。部外者じゃないんだけど、いない。
だけどフラっと現れても“なに、あの人誰?”ってならないんですよ。
“あ、横道さんだ”ってみんなが知ってる。横道は、王子様なんですよ。めちゃくちゃ抽象的なんですけど(笑)」
――何かにつけて枠に収まらない、と。
「どうかと思いますけどね(笑)。枠に収まってほしいときも収まらないし。
“ちゃんとしな?”って思う時もたくさんあって、叱ることも一番多い。
でも横道がいないとドギーパドルは成り立たないんですよ、きっと。
恵守も不満はあるだろうけど横道がいることで出来てることも多いと思います。
……横道 孟をまとめるのは難しいですね。でもやっぱり横道も優しいんですよね。
だから何かが出来なくても次は手伝ってあげよう、って思ってしまう。
愛すべき馬鹿ですよ。ズルいですね。ズルイって書いておいてください(笑)」
――では最後、慎太郎さんご自身はいかがでしょう。
「なんでしょうね。掃除してるおばさんじゃないですか?」
――そう来ましたか(笑)。
「自分が何か分からないですね(笑)。俺は皆で話したいこともあれば、直で話したい時もあるんですよね」
――1対1で、ということですか?
「そう。潤滑油になりたいんですよね。元々いるからこそ3人では言えないこともあるだろうし。
そういうポジションが必要だなって。多分そういうのが向いてるんですよね。
大したことが言えないことも多いけど、聞くことが好きだし。皆で集まった時に、
勝手にこうなのかな、と考えて何も言えなくなってしまうのかもしれませんが。
多分横道は恵守に言いにくいことがあるし、恵守は恵守で言いにくいことがある。
コタローもそうだと思うから、個別に話を聞きたくなるんですよね。
後から入ってきたからこそ、そういうことでもお互い言ったり聞いたりできるんじゃないかなって。
だから後から入ったのも悪くないなって」
O-WESTに、最高の犬掻きを観に来てほしい
(「エデンの西」The Doggy Paddle ONE MAN 2018 –予告編–)
――来年にはフルアルバム『Kinema Rock’n’Roll』の発売、そして5月にはTSUTAYA O-WESTでのワンマンライヴが控えています。
「『Kinema Rock’n’Roll』は今まで以上に恵守の正直な気持ちが形になってるし、
それを受けての自分を含めての音が鳴ってると思います。O-WESTでのワンマンという、
すごいことをやろうとはしてるんですけど、自分たちの中では過程なんですよね。
でも過程を成功させないとその先に行けないから。想像するんですよ……O-WESTで演奏してる時を。
左側に恵守がいて……たぶん恵守の性格だから、終わった後にはハッピーだけじゃなく、
もう次の野望を思い浮かべてるんだろうな(苦笑)。それだけストイックな性格なんですよ。
俺も不安はいっぱいあるし、みんな思うことはあるかもしれないけど、
ドギーとしては10周年で戌年。気合の入り方はすごいんじゃないですかね」
――O-WESTでドギーがどんな景色を見せてくれるのか、楽しみにしています。
「俺も楽しみです。たぶん、感動してくれると思うんですよね。
自分たちもお客さんの顔を見て感動したい。
だからひとりでも多くの人にドギーパドルの音楽を聴いてもらいたくて、こんな企画もやっています。
それでいつか“O-WESTで頑張ってやったよね”って笑って話したいなって(笑)」
――気が早い(笑)。
「来年5月16日、O-WESTに最高の犬掻きを観に来てほしいです」
Thanks 30 tickets!!
(取材・文:イシハラマイ)
(撮影:乙羽)